社会人野球観戦記 JR千葉-三菱日立パワーシステムズ(社会人野球日本選手権予選)
さて9月2日の回想の続きにお付き合いいただこう。
2戦目はJR千葉-三菱日立パワーシステムズ(MHPS)。
正直1戦目が今日の目玉と思っていた。試合内容を見ても、背景にあるストーリーを見ても、11月の今から振り返っても、それはまあ妥当だ。
ただ2戦目は2戦目で興味深い。
まずはJR千葉。JRのいわゆる支社チームだ。見たことない。フツーにアマチュア野球見ていても、情報がほとんど入ってこない。手にした日本選手権予選のパンフレットで、やっと詳細な選手の名前やデータがわかった。
昔は各県の鉄道管理局毎にあった硬式野球チームだが、国鉄民営化に伴いJR各会社のチームに吸収。しかし、支社内では野球クラブ(同好会のようなもの)は存続する場合があり、その後、支社の単独チームとしてJABAに再加盟したチームがいくつかあるようだ。JR千葉、JR秋田、JR新潟、JR盛岡、JR水戸がそれである。JRの凄いところはそれらがすべて企業チーム扱いというところだ。同じように東日本、西日本にチームを集約化したNTTの場合にも、集約に反対して残ったチームがいくらかあったようだが、それらは全てクラブ化している。信越硬式野球クラブ(NTT信越→NTT信越硬式野球クラブ)、東北マークス(NTT東北→NTTグループ東北マークス)が著名な例だ。どこまでを含めるかは微妙だが、集約化前のNTTチームの精神を受け継ぐクラブチームとしては松山フェニックス、愛知ベースボール倶楽部がある。まあしかし、いずれにせよクラブである。JRみたく支社内で完結させるどころか、そもそもNTT自体とのつながりが稀薄なんだろう。
しかし、JR支社チームはそうやすやすと選手集めができないようだ。やはり、他の企業チームとの試合でも苦戦を強いられる。しかし、あくまで登録は企業チームだから、企業チームが出場可能な大会しか出られない。いっそクラブチームにして、クラブチームのみの大会にも出られる方が現実的な目標もできるのではなかろうか…なんて思ってしまうが、僕には計り知れない色々な事情があるんでしょう。ともあれ、MHPS相手にお手並み拝見だな。
さて、三菱日立パワーシステムズ。MHPSという名前はよく聞く。私が初めてグランドスラムを買った2006年には、確か三菱重工横浜という名前ではなかっただろうか。横製という略称よりも、今ではMHPSという略称が板についてきた。三菱ふそう川崎なき今、神奈川の唯一の「三菱」だ。日産自動車の廃部以降、着実に力をつけ、二大大会の常連となった。強豪・JX-ENEOSの都市対抗出場が厳しくなっているのも、このチームの存在によるところが大きいだろう。MHPSへの名称変更以降は、2014中日の伝説(?)のドラフト1位、野村亮介が有名な出身選手だろうか。
さあ1回表、JR千葉の攻撃。MHPSの左腕・三小田章人(文徳高)を捉えられるか。三小田は三菱重工長崎に6年間もいて、合併を機にMHPSにやってきたピッチャーだ。暑いからかき氷を頬張りながら注視しよう。
まず1番石橋好古(千葉工大)はなんとなかなかお目にかかれないバスター打法。なかなか攻めてるな。三小田の重い直球に振り遅れているが、変化球を中前安打とする。そして2番田中伸樹(千葉経大付高)はバントで送り、一死二塁の好機。よし、先制して慌てさせよう、と思ったが…
3番松岡雄基(東総工高)、4番岡野直人(千葉商大)は速球にいずれも力のないセンターフライ。先制機を逸した。この時点で「なかなか厳しいなあ…」と思わされた。
1回裏、代わってMHPSの攻撃。JR千葉の先発は木内聖弥(淑徳大)。
右のスリークォーターで非常に力感のないフォームだ。120キロ台の速球と100キロ程度のカーブの緩急が持ち味のようだ。しかし1番八戸勝登(西南学院大)はその緩いカーブを狙い打ち、ライトへ引っ張って二塁打とした。2番常道翔太(東海大)もカーブを狙い打ってセンター前へ。あっという間に1点だ。そしてその後2四球で無死満塁の後、5番久保皓史(富士大)が右犠飛でさらに1点。6番二橋大地(東日本国際大)も中前打。あっという間に0-3。そして8番平野智基(日体大)がレフトへ会心の3ランホームラン。打ったのはシュート?だったか。
一気に0-6。うーん、MHPSが慌てる姿を見たかったのだが、現実は厳しい。よーいどんで6点入るのが、純粋な実力差なんだろう。
残念ながら大勢は決してしまった。しかし、この後JR千葉はMHPSに食い下がった。特に白眉が2回表だ。5番、6番が三小田の重い直球の前に連続三振。しかし7番齋藤昌誉(銚子商高)が変化球を打って三塁線二塁打(「打った自分がビックリしてるぞー」とのJR千葉のベンチからの野次は笑ってしまった)。そして8番芝崎淳(市原高)が左前安打を打って齋藤を本塁に迎え入れた。1-6だ。畳みかけたいJR千葉は9番に早くも代打石橋健太(国際武道大)を送るが、あえなく三振に倒れてしまう。しかし、実績のある三小田に対して、下位打線の「おっ」と思わせる攻撃だった。
JR千葉・木内も立ち直った。2回裏のMHPS打線に対し、シュートやカーブといった変化球が決まりだす。3番鶴田翔士(九州国際大)、5番久保に四球を出すもののピンチを切り抜ける。3回裏も0点に抑えた。この木内投手は、クラブチームとの他の試合では外野手で出場することもあると後に知った。しかしJR千葉はその後4回表まで、まともにランナーも出せない。
4回裏。再びMHPS打線が火を噴く。2四球ののち暴投で一死二、三塁の場面で、久保が左中間二塁打で2点追加だ。ここでJR千葉は木内を諦め、投手に武居亮介(国際武道大)を送る。
力感のない右投げのスリークォーターだが、この武居は実は捕手登録だ。どうなるかな、と思われたが、続く二橋を遊ゴロ、久木田を中飛に抑えた。その裏のJR千葉は、調子の良い芝崎が遊撃内野安打で出塁するも、後が続かなかった。
ここまで来るとMHPSも選手を何人か交代し、調整に入る。実力差のある試合だから、これも致し方ないんだろう。5回裏は、二死一塁から途中出場の塩見泰史(関東学院大)が緩いカーブを狙い打ちして三塁線突破二塁打で1-9。さらに3年前の大学選手権で見た成田昌駿(中央学院大)も右前安打して続いたが、4番河野が見逃し三振でこの回は終了した。
6回表からMHPSは三小田から松田浩幸(近大)に継投。左オーバースローから力強い速球を投げる。JR千葉の田中に四球は出したが、岡野を併殺打に打ち取って3人で切り抜けた。6回裏のMHPSの攻撃は、武居が意地で0点に抑えた。
7回表のJR千葉の攻撃。7回7点差でコールド制のあるこの大会では、2点以上取らなければこの回で試合終了だ。JR千葉は代打攻勢に入る。5番の代打鎗田直哉(東洋大)は二ゴロ。続く代打鈴木将(君津商高)は中前安打も、その次の代打中本浩平(国際武道大)は遊ゴロ。最後にこの試合唯一当たっている8番芝崎に全てをかけたが、あえなく三振に倒れ、ゲームセットだ。
1-9。まあ予想できた結末だった。しかしJR千葉もよく食らいついたんじゃないかな?正直完封負けも覚悟していたので。アグレッシブな攻撃はよかったし、投手陣2人とも癖が強く、面白かった。しかし、選手名簿を見ても30歳超えの選手がかなりいるが(外野手は全員そう)、本当に集めてはいないんだな。たまたま集まった、やりたい人同士でやっているんだろうか。大卒選手の比率も半分弱といったところで、ほとんど千葉県内の高校や大学の出身選手ばかりだ。「地元のチーム」なんだろうな。さすがに強豪企業チーム相手では分が悪い気はするが、クラブチーム等を相手にしたとき、どんな試合をするのかは見たくなった。こういうチームのことはなかなか調べても出てこないことが多いが、もっと知りたいところだ。